生物を繁栄させるには?

多様性とセクハラ軽減が種の繁栄の鍵になるいうことがアオモンイトトンボを使った研究で判明した。

 

昆虫におけるセクハラとは?と思う人も多いだろう。

トンボの雄は交尾の回数に比例して子孫の数が増えるため、すきがあれば出会った雌に交尾を試みる。そのため、雄がしつこく交尾を試みる行動がしばしば観察される。このようなセクハラが雌の産卵行動やエサ取りを妨害して、次世代に残す子孫の数が減少してしまう。

 

アオモンイトトンボはやや小型のごくありふれたトンボで、5、6月に本州以南に出現する。雌には、体の色彩が青色と茶色の2種類がいる。研究グループが野外で観測したところ、雌の両方の色彩型が半々に混在して多様性が高いほど雄が混乱して、効率的に雌を探索できず、雌へのセクハラのリスクが低下することを見いだした。

さらに、野外にテントのような大きな虫かごを設置して、雌の体の色に関して青色と茶色の比率を人為的に変えて実験したところ、雌の多様性を高めた集団ほど、繁殖力が上がることを実証した。一連の観察や数理的分析、実験は、集団内に個性の多様性を許容し保持し続けることが、リスクを分散し、集団の繁栄につながる可能性を示した。

 

 

研究グループの高橋佑磨さんは「5年間、沖縄から宮城県まで全国を回り、スウェーデンまで出かけて、苦労して野外調査や実験を積み重ねた。昆虫の世界の話だが、ヒトを含む動物の繁殖にも同じ原理が働いているのではないか。『多様さが生物を繁栄させる』という視点は重要で、多様性生物学の研究や、生物の保全対策に生かしてほしい」と提言している。

 

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